これは仕上がった作品の部分だけど、バルールについて考えながら見るとおもしろいかも。 バルールについて続きを書くが、「なぜ平面に描く方がいいのか?」という自問に自答しなければならないが、私自身、書きながら考えている所があって、内容にあやふやなところが出てくるかも知れない。ご容赦を。 さて、写生のような絵ならば、見えた通りに描けていれば、バルールは遠近法に沿って合ってくるはず。この場合では、バルールということを理解していなくてもバルールの合った絵が描ける。 カメラが発明されると、画家は見えた通りに描くことから卒業しなくてはならなくなった。そんなものは写真にかなわないから。 さて、ある山の姿に感動した画家がいた。あの山を描きたい。だけど、空気遠近法だとぼんやりさせなければならない。ならば自分の印象に忠実にはっきり描いちゃえばいい、そうすれば写真とは違った絵になる。そこで、遠くの山をはっきりと描いたら、おお、とってもいい感じ。だけど、空とバルールが合ってない。じゃあ、空も強くしちゃえ。麓の中景も、全部近景と同じくらいのバルールで描いちゃえ。かくしてこれまでの古い絵や写真とは一線を画した、新しい力強い絵が出来上がった。同時に、古い遠近法からも卒業してしまった(この辺の美術史的な流れは専門家に聞いて確かめてください)。 こうして出来上がった平面化された絵は、確かにバルールの幅は狭くなり奥行きの感じは乏しくなるが、画家の感性を前面に押し出せるものだと知れ渡った。さらには、固有色からも解放され、形をデフォルメすることにも遠慮がいらなくなった。しかも、平面に描いても、空間感を出せなくなったわけではない。むしろ、平面に描きつつ空間感を出すのが、画家の腕の見せ所みたいになった。 というわけで、平面で描くのがなぜいいかというと、画家の思いをより前面に出すことが可能になり、写真や古い遠近法に囚われた絵とは違う、新しい絵画空間を手に入れることが出来るからなのだ(たぶんこういう事で合ってると思うが、どうだろうか)。
by hiroafukasawa
| 2013-07-24 19:48
| バルール
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